脳の老化を防止するNGF

 人の脳には膨大な数の細胞がありますが、成人以降、脳細胞はどんどん壊れていく一方で再生されることはありません。年をとって物覚えが悪くなり、記憶力が低下するのは老化現象の一つで当然のことなのです。記憶力を良くして痴呆を予防する薬があったらと誰もが考えてきました。この長年の夢の扉をひらく鍵として注目されているのが「神経成長因子NGF」です。

 1990年アメリカの研究者が国際学会でアルツハイマー型痴呆症の解決の糸口となる発表を行いました。アルツハイマー型痴呆症の患者の脳にNGFを注射器で投与したところ、明らかな症状の改善がみられたというものでした。

 NGFはアミノ酸がたくさん結合したたんぱく質の一種で、神経組織の成長および機能維持にとって重要かつ必要な因子です。ところが、加齢とともにNGFの合成量は減ってしまいます。そのため脳細胞の活力は衰え、死滅する脳細胞も増え、脳の老化が進むのです。このNGFを補う治療法は効果が高いことは確かですが、一般には普及していません。なぜなら、いくら効果が高くてもNGFを患者の脳に直接注入するのは大きな危険を伴うからです。腕に注射したり、口から投与してもNGFは脳には入っていきません。脳の入り口には血液脳関門といわれる場所があり、NGFを異物として排除するからです。

 そこで注目を集めたのが、脳内のNGFの合成を促す物質です。NGFそのものを投与しても脳に入らないのなら、脳血液関門を通過でき、なおかつ脳内のNGFを増やす物質を投与すればいいというわけです。それがヤマブシタケに含まれる「ヘリセノン」と「エリナシン」です。

 さらに私どもでは秋田県との共同研究で、脳内に入ってNGFと同様の生体活性を示す物質を発見しました。Saccharomyces属の中の醸造酵母からの抽出物(特許出願2011-020784)(特許微生物寄託NITE-P977)です。これとヤマブシタケを合わせることにより、脳の老化を防止する、より強力な力を発揮することが期待できるのです。

酵母の中から発見

 NGFの大量調整が困難であること、またNGF自体の使用に多くの課題があることなどから、NGFと同様の生体活性を示す成分を自然界から探索する研究が盛んに行われてきました。しかし生体に対して安全性が高い成分を安定的に取り出すことはこれまで困難でした。

 そこで私どもでは生体に対して安全性が高い作用剤を得るため、食品製造に利用される酵母菌株を用いた探索を行ったのです。

 その結果、神経成長因子様活性のひじょうに高い菌株を見つけることに成功し、その酵母からの抽出物(特許出願2011-020784)(特許微生物寄託NITE-P977)を安定供給することを可能にしました。

ヤマブシタケの「ヘリセノン」と「エリナシン」

 ヤマブシタケは中国で「猿頭茹(ばっとくくう)」と呼ばれる高級食材です。ナラ、カシ、ブナ、クルミなどの広葉樹の立ち木や枯れ木に生えます。キノコの傘は持たず、全体は卵型で上面を除く全面から長さ1~5cmの無数の針を垂らします。日本ではヤマブシが着る衣の胸に付ける飾りに似ているので山伏茸という名前が付きました。このヤマブシタケに含まれる「ヘリセノン」と「エリナシン」が驚くべき威力を発揮するのです。

 ヘリセノンとエリナシンはどちらもヤマブシタケを食べて体の中へ取り込まれると、血液脳関門を突破して脳内に入り、脳内で作られるNGFの量を増やす働きをします。ヘリセノンとエリナシンにはそれぞれいくつかの種類がありますが、中でも特に脳内のNGFを増やす力が強いのは、ヘリセノンDとエリナシンCであることがわかっています。ヤマブシタケにはこの二つの物質が大量に含まれています。つまりヤマブシタケを摂取することにより、脳内のNGFが増え、神経細胞の活力を高めることができるのです。これは脳の老化防止に役立つとともに、アルツハイマー型痴呆の引き金となる脳細胞の大量死を防ぐうえで大いに有効です。

ヤマブシタケ

酵素処理ヤマブシタケ

 ヤマブシタケなどキノコは細胞壁と呼ばれる体を守るための鎧を持っています。その鎧はカニやエビなどの甲殻類の表皮と同じキチンやグルカンと呼ばれる多糖類で出来ています。カニやエビの殻はとても硬いですが、実はキノコも同じ殻を持っているのです。ですからそのままでは中の有効成分を摂取することは困難です。ところがひとたびこの殻(細胞壁)を溶解してしまうと、裸の細胞になり、中の有効成分が人の体に吸収しやすくなるのです。

 PIVOT JAPANではヤマブシタケを全て細胞壁溶解酵素で処理しました。これによりヤマブシタケに含まれる「ヘリセノン」「エリナシン」などの有効成分を容易に吸収できるようにしました。